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バトシーラー日記

あまり知られていない様々な真実の知識をお届けします


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リスクを避ける日本の若者【日本衰退】


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2011年3月23日 リスク社会が若者を消極化させる

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 『リスクに背を向ける日本人』という著作を読んで、なるほどと思った。「若者の海外留学が減った」、「海外赴任にしり込みする若年社員が増えた」、など若者に関して「内向き論」や「リスク回避症候群論」が盛んであるが、本書はその根本的な原因、背景が日本社会そのものが高すぎるリスクを抱えていることにあると断言する。

 本書は米国における日本研究のホープであるハーバード大学社会学部長のメアリー・C・ブリントン女史と、日本の社会心理学会のリーダーである山岸俊男北海道大学大学院教授による対談形式の日本分析である(講談社現代新書、2010年刊)。

 ブリントン教授はバブル景気崩壊後の1990年代に日本に長期滞在し、日本の経済状況の変化が若者の雇用環境にもたらした影響を研究し、『失われた場を探して―ロストジェネレーションの社会学』(NTT出版、2008年刊)を著して話題となった。山岸教授は北海道大学の社会科学実験研究センター長を務め、心と社会の関係について学際的に調査、研究している。

 両氏の結論は、ひきこもりやニートに代表される若者の「リスク回避傾向」「内向き傾向」が若者だけでなく日本社会全体を特徴づけており、それが日本の社会が実はリスクが大き過ぎる社会であることから生まれているというものである。

 山岸氏は日本人のリスクを避けようとする傾向が世界のなかで際立っているとし、2005年から08年にかけて世界中で実施された「世界価値観調査」のショッキングな結果を紹介する。それによると「自分は冒険やリスクを求める」のカテゴリーに自分自身が当てはまらないと思っている人の割合は、日本人が70%強であり、世界でダントツ。カナダ、英国、米国は40%台、インドネシア、タイ、韓国は20%台である。

 最もリスクが高いのは雇用の分野である。リストラされたら先がないとの恐怖が日本人を萎縮させ、定年制も長寿社会日本においては労働意欲を持っている人にとってはクビ切りと同じになっている。米国人にとってはリストラは当たり前のことで人々はまた新しい仕事を探すから日本のリストラほど深刻さはない。日本では雇用の安定はすなわち終身雇用だと思われているが実は終身雇用自体も崩壊しだしている。米国の場合はセカンドチャンスを生み出す労働市場がある――と言うのが両氏の一致した観察である。

 眞露ジャパンの楊仁集社長が、興味深いことを言っている。「日ごろよく使う言葉の中でも、変化に対する日本人の情緒が表れている。『大変ですね』といえばネガティブな意味。大きい変化には否定的。一方、『相変わらずご愛顧願います』のように、『変わらない』のあとにはネガティブな表現が来ない場合が多いようです」(『世界経済評論』2011年3/4月号)。

 日本社会・経済の環境はどんどん変化している。しかし、その変化する環境に対応した制度・慣行の面での変化は鈍い。それが日本社会のダイナミズムを奪っている。雇用制度の面では、人々がそれぞれのライフステージに応じ、また習得した技能の状況に応じて柔軟に職場を選べるようなシステムとしての柔軟な労働市場を構築することが日本の課題だろう。それが真の雇用安定につながり、人々をリスクへの挑戦へ駆り立てる環境づくりにもなる。


日本人はなぜリスクを回避したがるのか
若者の「個人」意識が高まっている今こそ社会を変えるチャンス
2014.4.11(金) 藤 和彦
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 2014年3月26日、日本生産性本部は毎年恒例の新入社員のタイプを発表した。今年度の新入社員については「そこそこの内定を得ると壁にぶつかる前に活動を終了する」と指摘し、危険を事前に察知し衝突を回避する自動ブレーキになぞらえた。


 生産性本部は「劣悪な環境での労働を強いる『ブラック企業』が昨今話題になったため企業情報の収集に熱心で、就職活動を手堅く進めるローリスク志向がある」とその要因を分析し、「リスクを恐れず、失敗から学ぶ経験もしてほしい」とハッパをかけている。

周りを変えることに消極的な日本人

 だが、「リスク回避」は果たして若者だけの問題なのだろうか。

 「世界価値観調査」によれば、日本人は「自分は冒険やリスクを求める」のカテゴリーに自分が当てはまらないと思っている人の割合が世界で一番高い(70%強)。若者に限らず日本人全体でリスクを避けようとする傾向が世界で際立っているのだ。

 (筆者注)世界価値観調査は、世界80カ国以上の人々を対象に、政治・宗教・仕事・教育・家族観などを調べたもの。1981年に欧州価値観調査として開始され、1990年以降は5年ごとに実施されている。直近は2010年11~12月に実施されたが、各国比較ができる最新のものは2005年版である。

 個人的な体験や印象批評ではなく、各種の実験に基づいた客観的なデータをもとに「日本的なるもの」に切り込んでいる社会心理学者、山岸俊男北海道大学教授は、実験を通して「日本人はどんな場合でも他人から非難される可能性があることを避けようとする傾向が高い」と指摘する。リスクに背を向ける人たちの唾液を採取して分析すると、ストレスホルモンの分泌が高いという。

 グローバル化が進む中でどう変わればよいのか分からず、いらだちばかりが募る日本人の心情は、2010年の世界価値観調査によく表れている。つまり、置かれた状況に対して不安や怒りは強いものの、自らが政治・社会問題を変えていこうとする意識は低い。

 

人通りもまばらな夏休みの講義棟。木漏れ日が差す静かな廊下の奥で、その教室は熱気を帯びていた。
3年対象の公務員講座だ。

 黒板に書かれた数式に真剣なまなざしを送る学生たち。牧村健太郎さん(20)=福井県坂井市
仮名=も長身の背中を丸め、シャープペンシルを走らせていた。

 今年5月、大学の講座募集に迷わず申し込んだ。目標は福井県庁か福井市役所。両親も賛成してくれた。

 「小さいときから夢らしい夢を持った記憶がない」。小学校の卒業アルバムには将来「人の役に立つ仕事をしたい」
と書いたが、「どんな職業にも当てはまると思って」のことだった。

 バブル崩壊後の厳しい社会の現実は、メディアを通して嫌でも目や耳に入ってきた。高3のころのリーマンショックは、
自らも認める「安定志向」を決定付けた。民間企業を受けようとは思わない。「いつ倒産するか分からないし、
リストラも怖い。何より利益を競い合うのは嫌だから」

 福井市の製造業の人事担当(44)は、会社説明会や面接で学生と接するたび、仕事の中身よりも待遇ばかり
聞いてくる姿に寂しさを覚える。

 「大学での経験と言えばせいぜいアルバイト。『学生時代に培った経験を御社に役立てたい』ともっともらしく話すが、
少し意地悪な質問をすればすぐに底が見える」

 安定志向の表れか、公務員志望の学生が増えている。人材採用・育成支援サービスの「レジェンダ・コーポレーション」
(東京)の調査によると、来春入社に向け就活中の大学生のうち、51・9%が公務員になりたいと「思っている」か
「思ったことがある」と回答した。

 減少をたどる学生の留学者数も「最近の若者は内向き、冒険心がない」と揶揄(やゆ)される理由の一つになっている。

 

リスクに背を向ける日本人
P1030982

『リスクに背を向ける日本人』(講談社現代新書)を読んだ。
著者の一人であるメアリー・C・ブリントンは、アメリカにおける日本研究のトップを走り続けるハーバード大学社会学部教授であり、ハーバード大学への日本人留学生の激減に象徴される、日本人の内向きな姿勢に大きな危惧を抱いている。もう一人の著者である山岸俊男北海道大学教授)は、心と文化と社会の三つの側面から現代の日本が直面する問題の分析を進める中で、日本人のリスク回避傾向が今後の日本社会と経済にとっての大きな足かせになるだろうと考えている。

本書は、こうした二人の著者の対談の形をとって書かれているが、その対談の中心となるテーマは、ニートやひきこもりに代表される若者の「リスク回避傾向」が、実は若者だけでなくて、日本社会全体を特徴づけているという点にある。

日本人に内向きな傾向が強まっているとか、日本人のリスク回避傾向が強いという点は、これまでにも多くの方々がすでに指摘していることで、本書がこれまでと同じことを繰り返すだけのものであれば、屋上屋を架すのそしりを免れないだろう。しかし本書で紹介されている二人の議論は、若者だけではなく日本人全体を特徴づけるこの「リスク回避傾向」の原因が、日本社会ではさまざまなリスクが大きすぎることにあるとしている点でユニークだと考えている。この点についての指摘は、これまであまりされてこなかったように思う。

常識的には、アメリカ社会のほうが日本社会よりもリスクが大きな社会だと思われているが、それはむしろ逆だというのが、二人の著者が共通してもっている理解である。
本書の「まえがき」はこうやって始まる。実は日本のほうがリスクが大きな社会であるという点に関しては第1章で次のように説明がなされる。
アメリカ社会のほうが日本社会よりもリスクが大きいという常識は、例えば、雇用の安定についての考え方に反映されています。日本の方々は、雇用の安定とはクビを切らないことと同義なのだと考えていると思います。それはもちろん正しいわけですが、それだけじゃない。クビを切られても、すぐに新しい職を見つけることができれば、それはそれで雇用の安定につながります。そうなれば、「今の職を失ったら、やっていけない。だから今の職を失うようなリスクをとるわけにはいかない」と考える必要もなくなるんですね。

言い換えれば、労働市場の効率を高めれば、人々にセカンドチャンス、サードチャンスを与えることになるということです。そうなれば、現在の仕事や場所にしがみつく生き方じゃなくて、能力を高めながら積極的に自分の機会を生かす生き方が可能になるというのが、二人が対談の中で合意した中心的な結論です。
では、今の日本の状況を変えるには政治はどうあるべきか。
失敗を避けようとするのは、失敗をしたら後がない社会だから。失敗をしてももう一度チャレンジできるのであれば、失敗しないようにということだけを考えて生活する必要はなくなる。

だから、今の政治が考えるべきことは、そして国民全体が考えるべきことは、どうやって再チャレンジ可能な社会をつくるかということのはず。だけど、今の政治の争点は、どうやって再チャレンジする必要がない社会、つまり、今いる場所にいつまでもいることができる社会を作るかってことに集中してしまっている。
しっかりとしたセーフティネットが提供されていないことが根本的な原因であり、いまの状況を改善するためには何が必要なのか。
必要なのは、生産性の高い産業に労働力を効率的に移すための政策だ。そのためには、労働者が別の仕事に移りやすい環境を整える必要がある。再教育のための環境を整備する必要があるし、正社員と非正規社員の区別をなくす必要もある。

本書では、少子化年金問題、貧困の問題、いじめ、ひきこもり、女性の人的資本などの課題についても議論されており、両者のユニークな観点からの考察は参考になる。最後にメアリーは、人生をエンジョイするためにも行動することが一番だと言い、『人生を楽しみなさい。あなたの人生はリハーサルじゃなくて本番なんだから』を紹介している。

山岸は『ほかの人がどう思うかを気にするのをやめにする』ことが大事だといい、そのためには、気持ちの持ちようが大事。そういう気持ちを持つためには、ほかの人に嫌われても生きていける途(みち)を持っている必要がある、とアドバイスしている。

賢く生きるためには、(良い意味での)悪知恵も必要ということか。人生は一本道ではない。しかし、日本では途を外れると、元に戻りにくいように思う。高等教育でも仕事においても複数の途があっていいはずだし、どの途を通ってきても、それを適切に評価することが大事だろう。年齢とか性別などによらずに。本書でも強調されているが、アメリカ型の社会のほうが優れているとか、日本型のほうが優れているという議論ではない。どちらにも一長一短がある。ただ、これから日本社会がどういう方向を目指すべきなのか、それは国民自らが選択すべきこと。選択にあたっては、グローバル化する世界にあってどういう選択が望ましいのか、様々な情報を知った上で判断する必要がある。

いずれにしろ今の社会システムが急激に変わることは難しい。となれば、自分が今の途から外れたとしても食べていける途を持っておくことだろう。